『SISTERS』in シアタードラマシティ／2008年8月22日（金）19時

長塚圭史氏演出の『SISTERS』観て参りました。
私、観劇歴は長いものの、長塚氏の舞台は初めてです。
以前観に行くつもりでチケット取ったものの、当日高熱を出して行けなくなった経緯ありです。
ヘビーな物が多いという長塚氏の作品、暫くロンドン留学に行ってしまうため当分観れないということもあり、楽しみにしてました。

ここからネタバレありです。

はい。
とてもヘビーでした
一言で言ってしまうと『近親相関』の話です。
見終わった後、長い夢から覚めないようなだるさがあります。
舞台上の血縁関係以上の繋がりを持つ人達の、逃げられない心が観ている側にすごく投影されている感じがします。
たまに響く効果音とか、時間の流れを表現するために明るさや色が変わったり、水に反射して壁に映し出される照明の揺らぎが、登場人物の心の揺らぎ、不安定感、バランスの悪さを表現しているようで、不気味でした。
特に、壁に映し出されている不規則に動く水の波紋は、視覚的に不安定感を出すには効果的でした。
心を乱して役者が動くと同じように壁に映し出される水面も大きく揺れる。
こういう水の使い方があるんだと驚きました。

毒の花“曼珠沙華”が舞台奥から水に浮かんで流れ出てきた時には、鳥肌でした。
綺麗だけど毒（人にとっては禁忌）があると言われている花。
毒は毎日少しずつ体に入れていけば段々慣れてくる。
近親相関も毒。
これまた禁忌。
毒に犯された関係は、逃げ出すことができないのかと、苦しくなるラスト。
馨は途中、毒から逃げたい逃げ出すべきだと言っていたけれども、ラストで逃げたしたくなかった彼女の本音がわかります。
ここで突き落とされた感じ。
自分の本当の気持ちを暴露してしまった彼女の未来はどうなるのでしょう…。

馨を演じた松たか子さん。
この人ほんますごい女優だなあと思います。
今まで観た作品全てはずれがないです。

鈴木杏ちゃんも繊細な演技するよね。
黙ってても空気で伝わってくる物がある。

ろくでなしな親父演じる吉田鋼太郎さん。
最後開き直って自分を正当化する所、もう少し半狂乱になっても良かったかななんて、生意気なことを思ってしましました。（ファンの方読まれたらすみません）
もう少し、作家としての繊細さ、子供っぽさを残す所と、自分勝手な所、汚いところのギャップを出して欲しかったなと…。

この作品、共感できる部分はないけど、人間の影と心理描写が非常に丁寧で、作品としては秀作だと思います。
演出、脚本、美術、演技力がすべていいバランス。
長塚氏はロンドンで何を得て帰ってくるのでしょう。
非常に楽しみです。
パンフ買ってきたので、また時間あるときに読みたいと思います。