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2007年8月26日 (日)

草間彌生と伊藤若冲

わたしはたまに美術館に足を運びます。
最近はまっているアーティストがこの二人。
江戸時代の画家伊藤若冲をアーティストとカタカナで呼んでいいのかしら?って感じだけど。

草間彌生とわたしの出会いは、2005年の 1月~2月にかけて京都国立近代美術館で開催された『草間彌生展「永遠の現在」』でした。
それまで草間彌生は、わたしにとってはグロカワイイ水玉模様のかぼちゃを描く変わった人という印象でした。
その頃ちょうど観ていたテレビ番組の中でフランス人に有名な日本のアーティストは?という質問をしたところ「草間彌生」という返事が返ってきててそんなに有名なのかと驚いたのと、以前勤めていた会社の取締役が彼女の作品を購入したということもあり、一度生で見てくるかという感じのノリで行ってみた。
で、わたしはすっかり彼女の作品に魅了されてしまった。
魅了というのは少し御幣があるかな?
胸をわしづかみされたとか、脳裏に焼きついて離れないとかそういうのがあうのかな。
ただ単に水玉模様と思っていたものは、小さいものから大きなものが延々と繰り返され、立体感があるように見えたり、動いていたりするように見える。
Ouju_2
『黄樹』という作品を見た瞬間、ゆっくり動いているように見えて、ゆっくり動く映像なのかと思ってよく観たら「絵」だったので非常に驚いた。
こんなにも生きているように感じた絵を見たのは初めてだった。
生きている人や動物をそっくりに描いて「生きているように」見せる人はたくさんいるけれども、こういう抽象画を描いて生きているように見せる人は少ないと思う。
モゾモゾ動いているように見える水玉模様のそれは、何匹もの蛇が絡まりあってうごめいているように見える。
延々と続くように思えるその水玉は、怖いんだけど、手を伸ばしたくなる不思議な感じ。
Yayoi
その展覧会で観た『水上の蛍』もそうでした。
怖いんだけど、手を伸ばしたくなる、溶け込みたくなる感じ。
小さなブースの内部に鏡を貼り、上から色とりどりの豆電球を吊るして、下は水をはって、闇の中に浮かぶ光がブースの中で繰り返され、私達は作品の真ん中に立って作品を観る。
延々と続く闇の中の光がとても美しく魅了されるのだけど、段々自分がちゃんと立っているのか、浮かんでいるのかわからなくなりだんだん不安になってくる。
向こう側には何があるのか見てみたくなり、足が勝手に動きそうになる。
人間って安らぎを求めるものだと思うんだけど、少し狂気的なものに惹かれる面も持っていると思う。
作品の中にある永遠に続くであろう何か(漠然とした不安や恐怖を感じるのだけど、なんだか惹かれるもの)にとても魅力を感じてしまいました。
また草間彌生の個展があったら絶対いってみたいと思うのだけど、なかなか出会えず。。。
いつかまた、彼女の大きなインスタレーション作品を観てみたいと思っています。

で、タイトルのもう一方の伊藤若冲。
この人は江戸時代の日本画家。
最近有名でいろんなところで展覧会が開催されています。
この前京都の相国寺というところで、歴史的な展覧会『若冲展 釈迦三尊像と動植綵絵 120年ぶりの再会』が開催されました。
その展覧会を観る直前に名古屋に住む友達のところに遊びに行ったら、伊藤若冲の画集があって、彼女が今とってもはまっているということ。
Jyakuchugunkei
みさせてもらったら、それは驚くくらい緻密に描かれた鶏の絵。(動植綵絵「郡鶏図(ぐんけいず)」→)
その時は、「ふ~ん。現代ならこういう絵を描く人いるだろうなあ」位に思ってたのですが、画集をペラペラめくってみてて年表を見てびっくり!
江戸時代の人だったのです。
江戸時代に書かれたとは思えない構図と色の鮮やかさで、絵というよりは「デザイン」のような印象でした。
で、調べてみたらラッキーなことに、ちょうど京都で展覧会が開催されるということで、行って参りました。
会場に行ってみたら、人人人。。。
最近、伊藤若冲が密かにブームがきているということと、いつも相国寺に収められている『釈迦三尊像』と宮内庁にある『動植綵絵』が120年ぶりに一挙公開されるという歴史的なイベントだったようで、すごいいいタイミングで伊藤若冲を知ることができたなあと嬉しく思いました。
行った日は2時間待ちで、午後から用事があったので結局その日は断念して別の日に行きましたが、その時も2時間待ちで会場に入りましたよ!
Jakuchurose 画集で見ていた作品よりも更に色の鮮やかなこと!(←動植綵絵「薔薇小禽図(ばらしょうきんず)」)
本当に江戸時代の画材で描かれたものなんでしょうか?
あと、偏執的なくらいの緻密さ。描くことへの執念、執着心を感じてしまう。
伊藤若冲はかなりの変人だったに違いない(笑)
会場で人ごみに押されながら作品を見ていて感じたものが、草間彌生の作品を見たときと同じものでした。
癒しは全く感じない。
不安と恐怖を感じるけど、作品の中に入ってみたくなる。毒を持つものへの好奇心。
伊藤若冲の作品は丁寧で緻密であることが特徴だと思われがちですが、彼の一番の特徴は、どろどろとしたものが作品の中で増殖して侵食していくように見えるところだと思います。
作品の中の動物は生きているように見えるのはモチロンですが、それ以上に、その中に書かれた植物や岩が増殖して全てを飲み込んでしまうような感じがします。
観ていて鳥肌ものでした。
Jyakuchukinkei今までに溶けていく雪をこんな風に表現した人がいるでしょうか?(動植綵絵「雪中錦鶏図(せっちゅうきんけいず)」→)
どろどろとしてとっても粘着質で…。
真ん中に立つ錦鶏がとても凛として自信に溢れているように見える反面、周りのどろどろした雪が段々と侵食しているように見えます。
若冲は、この緻密で精密な部分とどろどろしたところが、うまく融合しバランスが取れていて、こんな表現をした人が他にいただろうか?と思えてしまいます。

時代が変わってもこの二人の間には本質的に同じものを感じました。
二人とも描くことで生きれている感じでしょうか。
呼吸をするから生きれているという自然な人間の行動みたいなものではなく、おぼれそうな人が必死になって顔を水面に出してるくらいの必死さ切迫さがあります。
「描かなきゃ死んじゃう!!」ぐらいの…。
描く事、作る事への執着心=生きることへの執着心って感じかな。
見れば見るほど、両者の作品はサイケデリック。
常人の手によるものでじゃないですね。

とりあえず、すごいもんを今生のうちにみちゃったもんだ!と思います。
二人の作品に出会えたことに感謝。
二人の作品を観ると、どっと疲れますが、ええもんと出会えたなあ~と思います。

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